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JAFの趣味なページ

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それバズーカちゃう

このあいだの「砲の種類」でちょこっと書きましたが、今回は少し本格的に解説していこうと思います。

マンガやアニメ、映画を見てみれば、結構「バズーカ」って名前は耳にすると思います。
肩に担いでトリガーを引けば、意を決したようにミサイルやロケット弾(時には光弾)が飛び出て目標に吸い込まれてゆく、かっこいいですよね。
ですが、一言つっこめば

それバズーカじゃねえ!!(笑)

肩に担いで撃つ兵器を全部「バズーカ」と呼ぶのならば、漫画家は全員手塚治虫と呼ぶのと同じことです(笑)


M1バズーカ
本題です。そもそも「バズーカ」というものは第二次世界大戦中の1942年にアメリカ陸軍が採用した歩兵が携帯可能な対戦車ロケット弾発射機(ランチャー)で、直径2.36インチ(約60mm)、全長155mm、重量5.5kgという兵器の非公式の愛称です。由来は当時アメリカの人気コメディアンだったボブ・バーンズ氏の使用していたラッパ型小道具にM1が形が似ていたことからです。
なのでそれとその改良型以外はバズーカじゃありません。バズーカに似たロケット弾発射機です。ミサイルを発射するものは既にロケット弾発射機でさえありません。ただのミサイル発射機です。
で、結局どんなものなのか。筒です。照準装置と引き金、それにロケット弾点火のための簡単な装置(電磁誘導を利用して筒状コイルの中に棒磁石を入れたとき発生する誘導電流を利用する仕組み)がついただけの鉄でできた筒です。
もちろんこんなものは量産にも手間がかかりませんし安上がりです。しかも再利用可です。まあはっきり言ってしまえば、ロケット弾に点火した後まっすぐ飛ばすガイド、これです。
もちろんこの程度の代物なので発射したロケット弾の速度は遅く(大砲に比べて比較的、です)徹甲弾では戦車の装甲をろくに貫けません。装甲を貫通しなければ撃破できないのですから、一計を案じる必要がありました。
そこでロケット弾に採用されたのが成形炸薬弾(HEAT弾)です。

HEAT弾は炸薬を円筒状に成形し、それにくぼみをつけて発火させるとそのくぼみから超高温超高速のジェットが噴出すという原理(モンロー効果・ノイマン効果)を利用した弾頭の一種です。
炸薬は通常弾体に収められていますが、その一方を金属でできた円錐で構成します。こうすると炸薬が爆発したエネルギーは円錐の頂点に集中し金属を溶かしてかつ運動エネルギーを与えます。このため高温高圧の溶けた金属のジェットが単一方向に向かい、その運動エネルギーによって戦車の装甲に穴を開けその上中にいる乗員を殺傷します。
このHEAT弾の良いところは貫徹力が速度に影響されないことで、常に一定の効果を狙えます。その代わりにメタルジェットが生まれる前や生まれて時間が経ちすぎた後には効果がなくなったり、弾体が回転していると爆発エネルギーの集中が妨げられて十分な効果が発揮できなかったりと言う弱点もあります。
現在このロケット弾発射機はもちろんのこと、様々な対戦車火器や戦車砲にも採用されています。

このM1バズーカは北アフリカ戦線でデビューし、かの有名なロンメル戦車団に対して使用され絶大な戦果を挙げました。太平洋戦線でも日本の戦車(もともと当時の日本の戦車は装甲が薄すぎることで有名でしたが…)にも使用されたようです。
因みにM1の装甲貫徹力は130mmだったと言われています。
その後さらに装甲が厚くなったドイツ戦車(ティーガーなど)に対抗するため口径を3.5インチ(89mm)に拡大した改良型が開発されましたが、ドイツ降伏と同時に中止されていました。
ところが1950年に朝鮮半島で勃発した朝鮮戦争。そこで北朝鮮軍が使用しているソ連製T-34戦車にM1では歯が立ちませんでした。そこで中断されていた3.5インチの改良バズーカを完成させてM20「スーパーバズーカ」として前線に送り出し、北朝鮮戦車の3割をも破壊する戦果を挙げました。これは装甲貫徹力300mmです。


ちょっと話がずれました。
ともかく「バズーカ」とは正しくはアメリカ陸軍が使用したM1とその改良型にのみ使える名称で、なんでもかんでも肩に担げば「バズーカ」ではありません。
かなり詳しくないと画面を見ただけで兵器の名前を判別するというのは相当に難しいですが、せめて「ロケットランチャー」とか「ミサイルランチャー」と言ってあげてください。撃ったのが弾道を描いていいたらロケットランチャーで、誘導されていたらミサイルランチャーです。
ではよく「バズーカ」と間違われるものをあげて見ましょう。

・M1とその改良型以外の携帯対戦車ロケット
これは見分けるのは相当難しいです。でも簡単な見分け方があります。それは「第二次世界大戦や朝鮮戦争の戦争映画で米軍が使っているのはバズーカ、それ以外はバズーカじゃない」これでほぼOKです(笑)プライベート・ライアンには米軍がM9A1バズーカ、独軍がバズーカを鹵獲・独自に改良した「パンツァーシュレック」が登場していました。

・携帯式無反動砲
筒だし弾体も見えないしで判別は難しいですが、中に溝(ライフリング)があったらほぼ間違いなくこれです。使用するのはロケット弾でなく普通の砲弾で、ロケットランチャーでさえありません。詳細は「砲の種類」参照。陸上自衛隊も84mm無反動砲(カールグスタフ)を使用しています。
そういえば「ガンパレード・マーチ」というゲームの中で「ジャイアント・バズーカ」とよばれるものがありましたが、あれは発射と同時に後方に動質量の木製弾丸を発射し反動を相殺する無反動砲です。

・携帯式対空ミサイル
ミサイルランチャーです。ヘリを落としていたらほぼこれだと考えていいでしょう。アメリカ製作の映画では「FIM-92 スティンガー」が使われることが多いですが、スティンガーは筒の右側に大きな敵味方識別装置があるのでそれでも判別できます。
因みに映画「ブラックホークダウン」でヘリを落としていたのはRPG-7です。聞いたところによると数千発のRPG-7を時限信管で空に向かって発射し撃墜したとか…ソマリア民兵恐るべし。

・携帯対戦車ミサイル
地面にすえつけられて発射するものが多いですが、中には肩担ぎで発射できるものもあります。照準機などでゴテゴテしたものが多いので判別は簡単でしょう。また誘導されていればこれです。

・パンツァーファウスト
独軍が第二次世界大戦中に開発した対戦車火器です。判別は発射筒の先にどでかい弾体があるので簡単です。また構造も発射と同時に後方に向かって同質量の物体(カウンターマウス)を飛ばす無反動砲(弾体はHEAT弾)で、ロケットランチャーではありません。実はこれはずっと発展を続けながら現在も生産されていて、陸上自衛隊でも「110mm対戦車榴弾」として「パンツァーファウスト3」が採用されています。
最近の型は無反動砲で発射後ロケットモーターに点火するものがありますので、無反動砲とロケットランチャーの中間と言えるようになって来たかもしれません。
そういえば漫画の「ドラゴンヘッド」でヘリのパイロットがこれ使ってました。飛行科である彼がどうやってそんな代物持ち出したのかは不明です(笑)。あと「ドラゴンボール」のヤムチャが使っていたような気もします。現在のこれは肩撃ちが基本ですが、昔は脇に挟むのが普通でした。

・RPG
特にRPG-7をよく見かけます。他のはほとんど見かけません。と言うよりよほどのことがないかぎり出てこないと思うのでRPG-7だけで十分です。パンツァーファウストより細身の弾体が先についています。映画でテロやゲリラが使ってるのは多分これです。教科書やニュースなどでもよく見かけます。
後方に発射ガスを噴出する無反動砲で、発射された弾体は10m飛翔した後安定翼を展開、ロケットモーターに点火して加速します。なので無反動砲とロケットランチャーの中間です。
RPG-7

こんなところでしょうか。これだけで相当埋められますが、アニメや映画の中ではオリジナルの兵器が登場することもあります。ですがこれは絶対にバズーカでは有り得ませんので(オリジナルだし)ご心配なく。
まあぶっちゃけてしまえば、「第二次世界大戦か朝鮮戦争で米軍(韓国軍が給与を受けた可能性もあり)の使ってる肩担ぎの筒がバズーカ、他の全部違う」ですんでしまうのですが(対戦車ミサイルや携帯無反動砲が登場する頃にはバズーカは使われていません)。
以上を纏めると、無誘導の対戦車火器は
1、バズーカ型ロケットランチャー
2、パンツァーファウスト型無反動砲
3、カールグスタフ型無反動砲
4、RPG-7・パンツァーファウスト3型無反動砲/ロケット弾複合式
に大別されます。繰り返しますが「バズーカ」はM1とその改良型専用ですので他には使わないようにしましょう。



なんだか支離滅裂な文章になってしまいました。

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さて、ここからは趣旨を変えて携帯対戦車火器使用の際の注意を書いておきます。使用の際は必ず守ってくださいね(笑)

まず最初に「1発撃ったらすぐ逃げろ!」
逃げてください。携帯対戦車火器は発射炎(バックブラスト)が凄いので発射位置がすぐばれます。急いで移動しないと蜂の巣にされてしまう可能性大です。連携の取れた複数同時攻撃で一撃必殺を狙うのが良いでしょう。

次に「後方確認を怠るな!」
ちゃんと後ろを見てから撃ってください。携帯対戦車火器は発射炎(バックブラスト)が凄いので後ろに人がいるとその人は良くて大火傷、下手すると焼死します。
カールグスタフなら後方90度・15m、RPG-7なら後方45度・30m、90mmバズーカなら後方60度・23mが立ち入り禁止です。ここにいると危ないです。構えている人をみかけたらその範囲には入らないようにしましょう。またパンツァーファウストは発射炎は小さいですが10mカウンターマスが飛ぶので当らない様に注意しましょう。

そして「広いところで使え!」
くどいようですが、携帯対戦車火器は発射炎(バックブラスト)が凄いので狭いところで使うと自分がよくて大火傷、下手すると焼死します。映画や漫画では狭いベランダや部屋から撃っているのを見かけますが、間違いなく大火傷するので現実ではまねしないようにしましょう。
また広いところで匍匐状態で使う場合も体をひねっておかないとバックブラストが脚に当る可能性があります。これも要注意です。
結構最近の話だったと思いますが、陸上自衛隊の89式装甲戦闘車についている重MAT(対戦車ミサイル)のバックブラストを受けて肩から先を吹き飛ばされ亡くなった隊員がおられるそうです。このように火傷どころじゃすまない場合もあるので十分注意してください。

それから「適切な距離を保て!」
ほとんどの砲や対戦車ロケットは射手の安全を確保するため、一定の距離を飛ばなければ爆発しないようになっています。なので至近距離から当てても爆発しない可能性があります。歩兵相手ならば直撃させれば行動不能に陥れられるでしょうが、戦車相手には全く無力です。またHEAT弾を使用しているので距離と破壊力は無関係です。離れて使ったほうが良いでしょう。かといって遠すぎると(射程ぎりぎり)命中が難しくなるので、適度な距離を保つことが重要です。

以上を心がけて安全に対戦車火器を使用をしてください(笑)


お付き合いありがとうございました。


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